イメージ・概念の機能 -尾方著デザインコミュニケーション初稿より

グラフィック・映像・空間などのデザインにおいて,それぞれの概念は,順に 共通イメージが果たすコミュニケーション,文脈によるイメージの使用と出来事の記録,参加と使いこなしを担保する空間とそれぞれが考え,抽象化されている.
さらにそれを統合的に捉えるとイメージという観念的媒体の存在が視点においての重要な箇所となる.
ラテン語のimago に由来する”イメージ”はもともと視覚的にとらえられたカタチを意味しており,五感によってとらえられたもの心的な表象をさす.
そこから展開し,心的表象の物質化されたものにとどまらず,想像のように新しくつくり出されたもの・表象の心的な部分を示すことが多くなり,今日ではこの意味で使われることが大部分である.

イメージと写像的に対応するのは概念である.イメージが感覚的・個別的・具体的であるのに対して,概念は客観的,普遍的,抽象的といわれる.しかし,これは全く逆の意味としてのそれぞれではない.その,イメージは感覚や感性の知覚・印象から,概念や観念に連関していく過程において,重要な媒体と考える.その先にはさらなる”イメージ”の展開や客観化された”知”へと途上していく.デザインというその過程の初期段階で,言語にならない感覚と知を結合させるためにイメージが用いられるのは自然な過程であり,客観化されたデザイン成果物に導くための重要な工程である.これはイメージがメンタルな部分とフィジカルな部分を結節させるあるいは相関させるものだからと考える.

共通感覚は感覚を全て活用し,個別ではなく総合的統合的に使われる感覚である.これはまさしくデザインの成果に求められているものである.また古来から,共通感覚自体を正確に置き換えるために修辞学(レトリック エーロクーティオ)が発展し,大きな地位をしめた.現在レトリックは,単なる言い回しといった意味程度にも用いられるコトが多いが,ここでは言葉により説明するための技術かつ手法として想像性と美をもったものと捉えられる.つまり,共通感覚を想像性をもって説明するための美しい技術・美しく表現する技術はデザインそのもののことである.

前段の解釈論が長くなったが,グラフィックスなどのいわゆる情報媒体と呼ばれるデザイン成果物の制作にあたり,現段階でイメージを重視しているのはこのようなためと考えられる.少しの言葉(やイメージ)から,いかにして共通感覚を形成するか,あるいは共通感覚を伝達していくかをデザイン成果物において重要であり、イメージ・概念の機能の提示にもなる.例えば,各人の名刺のデザインにおいては,書体と媒体の大きさ以外には共通スペックはない.一部部分的に幾何構成の共通性はあるが書体などとあわせて考えても,決して工学や工業と呼べる部類でない.しかしながら,だれしもが,「似たような」「統一”感”」を見いだす.これは,言語化されていない”イメージ”がデザインの源にあり,それを少しのパタンにより整理しているという過程をふんでいるからではないかと自らが考える.