2009.6.24 CO2排出量少ない発電所

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 三菱重工業三菱商事は22日、燃料の石炭をガス化し、二酸化炭素(CO2)を大幅に削減できる次世代型石炭火力発電所の建設に向けた実証調査を豪州から受注したと発表した。今後、2012年にも着工し15年の稼働を目指す。燃焼時に発生するCO2を回収し、地中に埋めるCO2回収・貯留技術(CCS)も併用することで、従来の石炭火力発電に比べ排出量を6〜9割削減できるのが特徴。次世代型石炭火力は福島県で実証試験が行われているが、CCSと組み合わせた大型の商用機は世界初となる。

 両社は、同事業を運営する豪・ゼロジェン社とプロジェクトの参画で合意。発電所の建設などは三菱重工が行い、三菱商事が全体のプロジェクトの調整を行う。今回の実証調査の受注額は1000万豪ドル(約7億6000万円)で、出力は53万キロワット。年間200万〜300万トンのCO2を回収でき、最先端の天然ガス火力発電(ガスコンバインド発電)と同等程度に排出量を軽減できる。
 次世代石炭火力は、石炭の粉末をガス化したうえで、ガスと蒸気のタービンを併用して発電する「石炭ガス化複合発電(IGCC)」で、IGCCは発電効率が48〜50%と高く、2割程度のCO2削減が可能。発生したCO2を化学的に回収し、地中などに埋めるCCS技術を併用することで、天然ガスや石油を使う火力発電所よりも温室効果ガスの少ない発電所となるため、温暖化防止とエネルギー問題の解決に大きな効果が見込まれる。
 三菱重工では「ガス化に酸素を使う欧米の手法と異なり、空気を使う日本の技術が評価された」と述べ、日本発の環境技術の優位性を強調した。


【予報図】
 ■「原子力に次ぐ将来性」に期待
 石炭火力発電は、新興国のみならず先進国でもエネルギーの安全保障や資源量の観点から、今後も世界の4割を占める基幹電源と位置づけられている。昨年の原油価格の高騰時にも、比較的落ち着いた値動きだったことに加え、可採年数が原油の3倍と豊富なことや、世界各国に資源が分散し調達しやすいためだ。それだけに石炭火力の高効率化や環境対策は課題だった。
 日立製作所も独自の脱硝触媒などを使った排煙処理システムを軸に、環境負荷の低い石炭火力事業を強化。08年度に約4500億円だった火力発電事業の売上高を、11年度には6000億円に拡充する構え。海外でも米GE(ゼネラル・エレクトリック)はIGCCを20年以上前から手がけており、世界的にも市場拡大の機運が高まっている。
 国内では電力各社などが運営するクリーンコールパワー研究所(福島県いわき市)で実用化に向けた研究が進められており、クリーンコール技術を加えた石炭火力発電は電気事業連合会も「原子力に次ぐ将来の発電技術」と期待する。

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