2010.6.24 吸引器と介護保険

介護保険でもなく、ディスポのカテーテルもあり、デザインからも考えなければならない機器。

http://www.sea-star.jp/img/goods/L/20041001154318b.jpg http://www.sea-star.jp/img/goods/L/020400202b.jpg http://www.sea-star.jp/img/goods/L/020400228b.jpg

http://www.sea-star.jp/

介護保険で借りられない医療機器 吸引器、吸入器は対象外
2010.6.24 07:57

介護保険で保険対象になるもの、ならないもの
 たんの吸引が必要な要介護高齢者が在宅に増え、自宅で吸引器や吸入器を使うケースも増えている。しかし、介護ベッドや車いすなどは介護保険で安く借りることができるが、吸引器や吸入器は「医療機器」に当たり、介護保険の対象外。購入や自費のレンタルでしのぐ家族から「絶対に必要なのに、どうして介護保険で借りられないのでしょうか」との声が上がっている。(佐藤好美)
                   ◇
 東京都下に住む嶋田美佐子さん(53)は今春、9年間の在宅介護の末に実母を86歳で見送った。
 母親は脳梗塞(こうそく)で倒れて以来、ほぼ寝たきり。嶋田さんは長期間にわたって介護食を手作りした。しかし、昨年秋ごろから飲み込む機能が低下した母親は、口から食べることが困難になった。入院先で栄養士から「このあたりで『胃ろう』に切り替えて、良くなったら、また口からの栄養にしたら?」と勧められ、胃にチューブで栄養を直接入れる「胃ろう」にした。
 胃ろうにするのとほぼ同時期に、母親のたん吸引が必要になった。当初はかかりつけ医から機器を借りていたが、いつまでも借り続けるわけにもいかず、入手を思い立った。介護ベッドや手すりなどのように介護保険で借りられるものと思い、市役所に出向いたが、返ってきた言葉は「たんの吸引器は介護保険では借し出しできません。決まりですから」というものだった。
 結局、嶋田さんは吸引器をネットで購入した。費用は約5万円。しかし、購入の4カ月後、母親は亡くなった。嶋田さんは「母は自分の身を守るだけの収入があったので、わが家では吸引器を購入することができました。5万円を出したことは後悔していません。豪華な旅行に1泊行ったと思えばいい。でも、吸引が必要な人には吸引器は絶対に必要な機材。なければ命にかかわるのに、どうして介護保険で借りることができないのでしょうか」と話している。

■安価・安全な入手の仕組みを
 介護保険では、介護に必要な福祉機器を1割負担で借りることができる。対象になっているのは、介護ベッドや歩行器、車いすなど12種目。だが、吸引器や吸入器などの「医療機器」は介護保険で借りることができない。医療機器は介護保険の対象外となっているからだ。
 しかし、要介護者を抱える家族からだけでなく、訪問看護師からも疑問が漏れる。東京都内のある訪問看護ステーションの看護師は「頻回の吸引が必要な人だけでなく、飲み込みの機能が落ちたので食事の前後に使ったり、万一のために、と吸引器を置いているご家庭もある。値段は4万〜7万円もかかるが、買っても使用期間が短いケースもある。酸素濃度を測る計測器や、たんを軟らかくする吸入器なども介護保険で安く借りられればよいと思う」という。
 しかし、問題は単純ではない。介護保険福祉用具はケアマネジャーが貸し出しを決める。単純にこのルートに乗せるだけでは、医療職のかかわりが不透明になるからだ。
 神奈川県の訪問看護ステーション連絡協議会の乙坂佳代会長は「吸引器を自宅で安全に使うには、管をどこまで入れるか、どのくらいの圧で吸引するかなど、家族に定期的に使い方を指導したり、メーカーによる機器のメンテナンスも必要になる。ケアマネジャーが貸し出しを決めるのではなく、医師が指示書を書き、看護師がフォローする仕組みが必要」と指摘する。
 自治体の中には、難病患者に対して医療機器の貸し出しや補助を行う自治体もある。東京都は、在宅の難病患者らに吸引器と吸入器を貸し出す。都の単独事業で利用者は現在約500人。

実施にあたっては、家族が適正、安全に吸引などを行えるよう、週1回の訪問看護をセットにしている。医療機器のトラブルに対する緊急対応、定期的なメンテナンスには業者が対応する枠組みもセットで設けている。医療機器の貸し出しに(1)医療職による定期的な家族へのフォロー(2)機器のメンテナンス−をセットで考えている好例だ。
 乙坂会長は「吸引器などの利用者の中には訪問看護を使っていない家庭もある。今までは医療処置の必要な在宅要介護者が少なかったから枠組みもなかったが、こうした人は格段に増えている。安全に機器を使用できる環境と、必要な機器を安く入手できる仕組みの両方をセットで提供する必要がある」と話している。
                   ◇
 ≪立教大学橋本正明教授の話≫
 「療養病床が減り、医療の必要な要介護者が自宅に増えている。こうした人が新たな負担をせずに介護できる環境を整える必要がある。診療報酬で対処しても介護報酬で対処してもよいから、どうしたら要介護者と家族を助けられるかを考えるのが大切だ。ただ、私自身は家族が日常的に在宅介護で使っているものを、介護保険で貸せないことには理由がないと思う。利用者の生活を支えるサービスを考えるのは本来、ケアマネの役割。ケアマネが機器のレンタルに訪問看護をセットで組み合わせて、そのほかにショートステイやデイを入れることで生活調整機能を果たせる。ケアマネに医療サービスへの配慮がないという意見はあるが、そこはケアマネ教育をいかに充実させるかという中で考えることだと思う」

http://sankei.jp.msn.com/life/body/100624/bdy1006240800000-n1.htm