2010.5.28 KDDI 読書専用端末開発

ソニー凸版印刷朝日新聞とともに、電子書籍配信に向けた新会社を設立するKDDI。発表会に登壇したKDDIの高橋氏は参画の狙いについて利用者層の拡大を挙げ、電子書籍専用端末を自社で開発中であることを明らかにした。

 「いつでもどこでも、読みたい電子出版物を手軽に楽しめる機会を提供し、国内の電子書籍市場の発展を目指す」――。こんな思いからスタートしたのが、ソニーKDDI凸版印刷朝日新聞が立ち上げる電子書籍配信の新会社だ。

 電子書籍の閲覧に適したKindleiPadなどのタブレット型端末が登場し、ストア環境も整い始めるなど、電子書籍ビジネスに注目が集まる中、より広くコンテンツを集め、より多くのストアやデバイスに提供できる環境を用意するのが狙い。新会社ではコンテンツの抽出から管理、販売、配信、プロモーションまでを行うとともに、それを実現するために必要なシステムの開発とその提供も手がける計画だ。

 発表会で新会社について説明した米ソニー・エレクトロニクス シニア・バイス・プレジデントの野口不二夫氏は、新会社がオープンなプラットフォームであることを強調。「電子書籍事業について、日本文化の継承を目指すという同じ志を持っているプレーヤーに参画していただき、このプラットフォームを使って書籍をお客さんに届けたい」と話し、企業名は明かさなかったものの、立ち上げ4社のライバルにあたる企業などにも話をしていることを明らかにした。また、電子書籍の配信フォーンマットやストアについても、「配信先を多く確保することが大事」(KDDI 取締役執行役員常務の高橋誠氏)というスタンスで臨むとし、フォーマットや配信先を限定するつもりはないと説明。iPadKindle向けの電子書籍配信についても「そこを否定するものではない」(野口氏)と明言した。

KDDIが参画する狙いは
 新会社の立ち上げ企業に名を連ねるKDDIでグループ戦略統括本部長を務める高橋誠氏は、今後リリースするスマートフォンや、電子書籍専用端末へのコンテンツ配信を視野に参画したと説明する。

 au携帯電話については多くの端末に電子書籍ビューワが搭載され、コンテンツプロバイダが電子書籍を提供する形のビジネスが成功しているが、今以上の利用拡大を目指すには、スマートフォンや専用端末が必要になると見る。例えば電子ペーパー型の端末やタブレット端末は、ITリテラシーが高くない人や年配の人でも使いやすいなど、「利用者層が広がるイメージをみなが持ち始めている」と高橋氏は指摘。KDDIとして、専用端末の開発に着手していることも明らかにした。発売時期についても「年度内に何とかしろよといいつつ……。我々はすでに通信モジュールを作っており、入れるだけの話だからもっとはやくできないかと言っているところ」と、そう遠い話ではないとしている。

 新会社でのストア向け課金ビジネスの展開については、スマートフォンの投入に合わせてIDに紐付く課金の仕組みを作ったり、従来型のキャリア課金に加え、クレジットやじぶん銀行決済もふくめた決済の仕組みを開発することになることもあり、「ほかのプレイヤーにも使っていただきたい」と話す。

 なお、現状、新会社の中ではKDDIが唯一の通信キャリアとなるが、ソニーが年内にも発売するというブックリーダーにauの通信モジュールが採用されるかどうかは決まっておらず、高橋氏は「ぜひとも使っていただきたい、と秋波を送っている」と苦笑した。

 モバイルネットワークの高速化が進むと、いわゆる携帯電話型端末だけでなく、さまざまな機器に通信機能が搭載されるようになる。3.9Gの時代には、ユーザーとの接点はキャリアだけが作るのではなく、他のプレーヤーもその役割を担うことになるというのが、高橋氏の見方だ。

 今後は放送網を使ったコンテンツ配信が本格化するなどインフラも多様化し、そこに新しいビジネスモデルを作っていけると高橋氏。この会社がそのきっかけになるというのも、参画した理由の1つとしている。

http://www.itmedia.co.jp/promobile/articles/1005/27/news086.html