2009.2.20 福岡ニューディール

福岡県が福岡ニューディールとして、「新製品・新市場・雇用創出」16プロジェクトを発表
以下、その全文

世界は、米国を震源とする百年に一度の経済危機に見舞われています。激しい信用収縮、世界総需要の大幅減退、資産価値の下落による損失拡大により、景気の底が未だ見えない厳しい状況が続いております。

世界経済が一刻も早くこの危機を脱出するためには、金融システムの抜本的な改革、果敢な財政出動自由貿易体制の堅持、そして、技術革新による新しい世界市場の創出が必要です。
今こそ、景気回復の起爆剤となる新しい技術やサービスを創出することが必要であり、世界最先端の産業技術を誇るわが国は、その主導的役割を果たさなければなりません。

福岡県は、自動車、先端半導体、水素エネルギー、バイオなど先端成長産業の育成、集積により培ってきた高度な技術や豊富な研究成果、優秀な人材を有しています。
こうした地域の潜在力を大いに活用し、「地域産業力の強化」、「生活の質の向上」、「成長産業の育成・発展」、「環境負荷の少ない循環型社会の実現」の4つの分野にわたる、「新製品・新市場、雇用創出」16プロジェクト「福岡ニューディール」を実行し、全力をあげて現在の大不況を乗り切ろうと考えています。


「新製品・新市場・雇用創出」16プロジェクトの概要
1 重点4分野(農業、福祉、新生活産業、安全)への人材移転政策
人手不足が続く「農業」、「福祉」、「安全・保安」分野や、多くの雇用創
出が見込まれる「新生活産業」分野の4つの重点分野ごとに、就業セミナーや
面談会、資格取得支援、合同会社説明会など人材移転施策を積極的に進める。


2 新高齢者自動車開発プロジェクト
高齢化の進展が著しい地方は、自動車は日常生活の足として必要不可欠。高
齢者が颯爽と運転する新しい安全カーを開発するため、学識経験者、自動車メ
ーカー、高齢者等による「新高齢者自動車開発委員会」(仮称)を設立し、高
齢ドライバーの特性とクルマに求められる機能を把握・分析し、平成22年度
をめどにコンセプトカーを提案する。


3「水素家庭用燃料電池燃料電池自動車」開発による低炭素社会の構築
家庭用燃料電池を集中設置した「福岡水素タウン」や副生水素を本格利用す
る「北九州水素タウン」、「水素ハイウェイ」等の実証活動を進め、家庭用燃
料電池や燃料電池自動車、水素エンジン車の開発・普及を促進する。また、平
成22年度に開設する「水素エネルギー製品試験研究センター」において水素
製品の試験研究を実施し、水素エネルギー新産業の育成・集積を図ることによ
り、低炭素社会の構築を目指す。


4 石炭ガス化・高効率発電システムの開発
石炭は可採年数が石油の41年に比べて147年と圧倒的に豊富な資源であ
るが、輸送や燃焼過程での取扱いに手間がかかり、CO2や硫黄酸化物等の環
境汚染物質も多く発生する。これらの技術課題を克服し安定したエネルギー源
としての利用を図るため、九州大学の研究成果を基に、石炭のガス化及び石炭
から生成される水素の高度利用により、高効率で環境負荷の少ない発電システ
ムの開発を目指す。併せて、ガス化した石炭から、現在石油から作られている
液体燃料や化学原料の効率的な製造を目指す。


5 超小型無線機による次世代高速大容量情報ネットワークの構築
どこでも誰でもインターネットに接続するには、網の目のように無線ネット
ワークを張り巡らせることが必要。シリコンシーベルト福岡プロジェクトでは、
置くだけで無線LANエリアが拡大する「超小型無線機」の開発に世界で初め
て成功。オフィスビルやホテル、地下街等の遮蔽物が多い場所でも高速大容量
情報ネットワークの構築が容易に可能となる。今後、本無線機のシステムLS
I化が実現すれば、家電や部屋のコンセント、街路灯、電柱など様々な機器へ
の搭載が可能となり、世界中をカバーする高速データ通信網を構築できる。


6 日本発明プログラム言語Rubyによる新ソフトウェア産業の育成
Rubyは日本人が開発した極めて生産性の高いプログラミング言語であ
り、Webサイトの開発などネットビジネスを展開している企業が新たな開発
ツールとして大いに注目している。この新たなテクノロジーを普及し、基本ツ
ールとして標準化を図ることで、斬新で魅力的なコンテンツが短期間で次々と
製作される環境が整うことになる。Ruby技術者の養成や、Rubyを活用
したビジネスモデルの普及啓発、新分野への適用の研究開発支援などに取り組
み、日本が世界をリードする新たなソフトウェア市場を創出する。


7 情報システム共通基盤の開発による次世代電子政府自治体の実現
我が国は行政の電子化が大きく遅れている。住居移転や結婚、出産、退職な
どの手続きが、役所に出向かずネット上で一度にできる利便性の高いサービス
を国民は享受できていない。国、自治体・企業が相互に連携できる情報システ
ム共通基盤を開発し、利便性の高い次世代電子行政サービスの実現により、社
会コストの削減と国際競争力のある電子社会の構築を目指す。


8 ペプチドワクチンによる第4のがん治療法の実現
がんは我が国の死亡原因の3割を占め、患者数は130万人を超える。福岡
バイオバレープロジェクトの研究成果で、政府の先端医療開発特区に採択され
久留米大学のペプチドワクチン療法は、患者自身の免疫機能を活性化し、が
ん細胞を攻撃する究極の治療法である。個々の患者の体質に応じたワクチンを
選択することで効果が高く、副作用も少ない。今後、臨床試験・治験を強力に
推進し、外科療法、薬物療法放射線療法に次ぐ第4の治療法として、世界最
先端の「がんペプチドワクチン」を実用化する。


9 医療・介護・生活支援ロボットの開発
産業用ロボット出荷台数の世界トップシェアを誇る福岡県では、ロボット産
業振興会議を中核に産学官が連携して次世代ロボット開発に取り組んでいる。
高齢者や要介護者が急増する中、誰もが安心して生活するためにロボット技術
は大きな威力を発揮することが期待されている。患者への負担が低い手術や医
療過疎地での遠隔手術を可能にするロボット、在宅での健康見守りや緊急救護
に対応するロボットなどを実用化し、新市場を創造・開拓する。


10 アジア若者文化ファッション交流拠点プロジェクト
世界で高い人気を誇る日本のポップミュージック、まんが・アニメ、ファッ
ション、食文化、ゲームなどの若者文化は、世界共通の文化として急速に浸透
し、新たな市場としても大きな可能性を有している。多言語ウェブサイト「ア
ジアンビート」による音楽やまんが、ファッションなどの若者文化情報の発信
とインターネットによる商品販売、デザイナーやアーティストの海外活動の拡
大、アジアからの観光旅行者や留学生の増加などを促進し、若者文化のアジア
市場・経済圏を形成する。


11 コンテンツ産業の拠点構築プロジェクト
クールジャパンと呼ばれる我が国のコンテンツは、世界中で大きな人気を博
し、世界から高く評価されている。福岡県は、九州大学芸術工学院をはじめコ
ンテンツ分野における優秀な人材が豊富であり、産学官が連携した「福岡コン
テンツ産業拠点推進会議」を中心に、九州で唯一のコンテンツ関連見本市「福
岡コンテンツマーケット」の開催による「ビジネス機会の拡大」、「アジアデ
ジタルアート大賞」の実施による人材育成などを進め、福岡のコンテンツ産業
の拠点化を加速させていく。


12 インターネット通販拡大大作戦
中小企業が国内、さらには海外に販路を拡大し売り上げを増やすためにはイ
ンターネットの活用が極めて効果的。福岡県は、低コストで出店でき、ネット
販売に関する様々なアドバイスを受けることができるインターネット通販サイ
ト「福岡よかもん市場」を運営しており、現在約460社が出店。今後、この
市場への集中的な出店促進を進めるとともに、売れるネットショップをつくる
ためのきめ細かなアドバイスを行う。また、「福岡よかもん市場」の海外取引
サイト(英語版)の構築並びに世界最大級BtoBサイト「アリババ」の活用
により、海外での販路拡大を強力に支援していく。


13 デザイン刷新による売れる商品づくり
売れる商品づくりにはデザインの刷新が極めて重要。良い製品であれば、製
品自体のデザインや包装デザインを思い切って斬新なものにすることで販売額
が飛躍的に増加する。福岡県は全国第5位のデザイン事務所の集積地であり、
九州大学芸術工学院をはじめデザイン系大学や専門学校も多数存在する。デザ
イン刷新に意欲的な企業に、デザイナーによる相談事業や、デザイン開発経費
の助成、販路の拡大支援などを行い、「売れる商品づくり」を支援する。


14 世界で売れる地域特産品づくりプロジェクト
県内各地には、魅力ある農林水産物や、優れた工芸品の生産技術など地域の
強みである地域資源が豊富に存在する。農林水産業者と中小企業者が協力し、
売れる特産品づくりを進めるため、農林水産業者と中小企業者とのマッチング
や、試作品の開発、デザイン刷新やインターネット通販などを積極的に支援す
る。


15 レアメタルリサイクルプロジェクト
世界的に希少な金属レアメタルは、自動車やIT製品などあらゆる電子機器
の製造に不可欠であり、我が国の廃家電製品には多量のレアメタルが蓄積して
いる。福岡県には、大牟田、北九州のエコタウンにリサイクル産業が集積し、
企業や大学において最先端のレアメタル抽出技術の研究開発が進められてお
り、廃家電製品の効率的な回収システムの構築、採算性の高い抽出技術の開発
などにより、レアメタルの安定確保と資源循環型社会の構築を目指す。


16 炭素繊維の用途拡大とリサイクル
炭素繊維は軽く(比重は鉄の 1/3)、強く(強度は鉄の 10 倍)、さびない
高機能素材であり、スポーツ用品や産業機械、航空機など幅広い分野に使用さ
れている。自動車への本格採用も検討されており、大幅な需要拡大が見込まれ
るが、リサイクルが難しく使用済みの炭素繊維の大部分は埋立処理されている。
大牟田エコタウン内の炭素繊維リサイクル実証プラントを活用し、再生炭素繊
維の用途開発と回収システムの構築を図り、炭素繊維産業の集積を目指す。

http://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/life/35/35703_1366851_misc.pdf